●絶妙な敷地の使い方(配置・レベル設定・外構)
「造成計画図」(右下/南に向かって敷地が下がる。青が盛土、赤が切土部分)
敷地内は南北方向中央辺りで南側に4m程度下がっています。地域柄から暑さ対策により南側には窓を開けず、朝日の入る東側開口という条件が最初に提示されていました。建築家は、それらの条件を網羅するよう、建物の配置計画とレベル設定、外構計画をしっかり計画してくれています。
「南北方向の断面図」
構造は沖縄の自然環境を考慮して鉄筋コンクリート造(RC造)です。敷地北側の平場のある場所は平屋とし、南側の4m低い部分は階高を抑えた2層の上に平屋を載せた3層としています。外構は部分的に盛土や切土を加えた上で、敷地内のレベル設定、そして建物の階高設定をして、それらが適正に計画されたことによって、2階(リビング階)の床レベルはタコノキの庭の高さに合わせられています。条件に合わせて個別に、独創的な設計ができることは建築家に依頼する醍醐味だと痛感します。
●沖縄の強い日差しを避ける設計を!
「日射検討図」は、東側の庭側に大きく開けられた窓からの夏至・冬至の朝(8時~11時)の光の入り方を示したものです。夏至の熱い時期には11時には張り出した庇が直射日光をさえぎり、冬至の寒い時期には午前中は直射日光が入る設計になっていますね。
西側(道路エントランス側)・南側は強い日差しを避けるため、外壁の外側に花ブロックの壁を一枚建てています。ホウオウボクの緑陰と花ブロックからは風が通り抜けてゆき、この中間領域が室内の温度を下げてくれるのです。
日差しを避けて設計された室内は
白壁が明るく
内部にも花ブロックが使われて
風や光が通りぬけ
軽やかさがあります。
「ライフスタイルシート」にご記入いただいた、ご主人希望の床にごろっとできる和室。来客用でもあります。簾戸はロールスクリーンの布製で、通す光はしっとりとした雰囲気!透けて見えるのは南側の外壁に使われた花ブロックです。
≪建築家から≫
「海と緑が見えるリゾート感のある家に住みたい」
建主が新居に望む38項目の真っ先にありました。敷地の半分は緑に覆われた急斜面。9月の現地は、道路に近い建てられそうな部分も夏草に覆われ、緩やかに南に下っていました。急斜面の山の緑を受け止め、緩やかに下る地面を離れ、浮かぶ水平に伸びるテラス。現地で最初に感じたことです。新居に望む項目の2番「ゆったりとした安らげる生活」が展開する伸びやかなテラス。生活はテラス上に、支える設備や駐車場が文字通りテラスを支える基壇となることを考えました。
私の提案について、設計を始める前に「気に入った点・気になる点・要望検討課題」とする34項目のメールをいただき、建主の考え・人柄がよくわかり、心地よい緊張感を感じました。現場近所に仮住まいの建主とは月1の設計打合せ。その後の会食、城址・旧家巡りの会話さえ新居設計のヒントとなりました。頻繁なメール交換もあり、沖縄と東京の距離感を全く感じません。テラスで展開する生活に向けた打合せは、月1~2回現場監理に行った際にも工事に間に合う限りつづき、植える植物を決めに北の今帰仁までご一緒しました。建主と一緒につくった建築という感じがします。
≪建主さまから≫
沖縄での生活をスタートさせた当初、非常に大きな台風が来襲したことがあり、本土では経験したことがない強烈な風や雨に恐怖感を覚えました。この体験がアパートでの生活に不安を覚え、災害に負けない頑丈な家で暮らしたいと思うようになりました。
家を建てるにあたっては、最初に家づくりに対する要望をリスト化して提出しました。夫婦の考えや要望を考えていくにあたり、次々と浮かぶ要望は項目として相反する要望が出てきたりしたのですが、とりあえずこのまま出してしまいました。たぶん打ち合わせの中で矛盾する項目は、どちらかが廃案になるのだろうなと思っていました。しかしながら鈴木さんは、すべての項目を否定することなく丁寧に考えてくださり、解決策を提案してくださいました。我ながら無茶な要望をしているとの思いがあったのですが、この対応には非常に感激しました。そして今、完成した我が家は台風時でも安心感があり、住みやすく、大変気に入っています。
- 詳細情報
●所在地:沖縄県 ●家族構成:ご夫婦 ●敷地面積:1139.37㎡(344.66坪) ●延床面積:295.65㎡(89.43坪) ●構造:鉄筋コンクリート造(RC造) 地下1階含む3層構造 ●コースお申込み:2013年5月 ●竣工:2015年10月 ●担当コンサルタント:村松葉子(文) ●設計:鈴木孝紀(鈴木孝紀建築設計事務所)(写真提供)
ご利用サービス 新築・建て替えコンサルティング 建築家コース(旧コース)