お問い合わせ 03-5322-6518
受付時間 10:30〜18:30 (水曜日休館)
家づくり相談[無料]

OZONEがお手伝いした
住まいの事例

一覧へ戻る

MNH -高さ10m制限内で4層を叶えた複合用途の賃貸集合住宅-

最寄りの東急東横線の武蔵中原駅からは少し距離のある100坪の敷地。1階をグループホーム(賃貸)、2~3階を賃貸集合住宅、4階を二世帯住宅にしたいというご相談でOZONEにいらっしゃいました。依頼された事業主のSさんはデザインのお仕事をしていらっしゃることもあり、建築家に依頼したいというご希望がありました。

依頼先の選定

SさんはOZONEの設計プランコンペにて難しい課題を一緒に解決してくれる建築家に巡り合うことができました。

事業収支に心配があり、鉄鋼系のハウスメーカーにも事業収支を踏まえてご意見を伺いましたが、当初から『3階建てしか建てられない、賃貸事業の実現は厳しい』とのこと。一般的には確かにその通りです。
そこで建築家の知見が欲しいということで、建築家3組のほかに、ハウスメーカー2社も加わった5組によるコンペを開催することになりました。
設計プランコンペでは参加者の多くが3階建てを提案する中で、ICU一級建築士事務所の長田直之さんだけは、階高と断面的な工夫により高さ制限のある建物に4フロアの異なるスペースをプランし、事業収支が良い兆しとなる建物づくりを提案してくれました。
その後も工事金額の調整など、大変厳しい状況を乗り越えて1階がグループホーム、2~3階が賃貸住宅、4階がオーナーの事務所と2世帯住宅という複合用途の賃貸集合住宅が完成したのです。

■新建築2023年2月号((株)新建築社)に掲載されました。
■2023年度グッドデザイン賞を受賞しました。
グッドデザイン賞受賞の詳細はこちら

【平面図】

下段:1階 グループホーム、中段:2~3階 賃貸住宅、上段:4階 二世帯住宅

casehousedetailmnhm_07.jpg

【断面図】

casehousedetailmnhm_08.jpg

断面図上の赤い線はコンクリート内の鉄筋を示しており、逆梁にすることで階高を低く抑え、高さ制限の10m内に4層を配置しています。
通常の梁とは異なり、梁の構造が上下で逆転することにより、この建物では床スラブ上の腰窓の下壁内に梁を配置し、階高が低くても下階の天井高が梁成(はりせい)に影響されないように計画されています。

【1階エリア】
障がいのある人たちのためのグループホーム

ご家族の中に脳性麻痺による障がいをもつ方がおり、ご家族をはじめ、障がいのある方たちのグループホームに入居して頂くことは当初からのSさんの強いご要望でした。グループホームの入口は、左側の奥にあります。
その他の用途の部屋へは右側に共用玄関があり郵便スペースやエレベーターがあります。外観正面の緩やかな外部階段で上階へ上がることも出来ます。

casehousedetailmnhm_09.jpg

外観

casehousedetailmnhm_10.jpg

グループホームの入口

隣地にある桜の樹を絶やすことのないように、上部の構造をキャンチレバーとすることで基礎を樹木からできるだけ離して計画。樹の根を傷めないように樹へのダメージを最小限にしています。
長くここにある桜は、人々の共有の記憶であり街の財産です。

casehousedetailmnhm_11.jpg

【2~3階エリア】
賃貸住宅

賃貸住宅はSOHOとして活用できる間取りで、入口のドアや壁面はガラス面が大きく取られて廊下に対して開放的です。
廊下は各住戸をつなぐ"路地"となり、井戸端会議で情報交換が出来るイメージです。中廊下の突き当りも外部に向けて開口が取られており、明るい雰囲気となっています。

casehousedetailmnhm_12.jpg

casehousedetailmnhm_13.jpg

2階、3階の2フロアを賃貸住宅用として確保するため、階高は抑えつつ開放的な空間になるよう、天井はコンクリート打放しの直天井です。一方、開口部は窓横に広く天井まで大きく開いているので、天井の低さや圧迫感は感じません。

casehousedetailmnhm_14.jpg

casehousedetailmnhm_15.jpg

casehousedetailmnhm_16.jpg

【4階エリア】
二世帯住宅・(オーナー事務所)

最上階の住宅へ向かう明るい廊下。規則的に配置された開口部が明るく、気持ちが良い空間となっています。

casehousedetailmnhm_17.jpg

広いLDKから、テラス越しに二世帯住宅のもう一つの住戸を見る。内装は白を基調としたモダンな佇まい。壁の上部に木製の縦ルーバーを配して落ち着いた雰囲気です。

casehousedetailmnhm_18.jpg

オーナー邸の広いテラスは眺めが良く、二世帯間をつなぐの交流の場となっています。

casehousedetailmnhm_19.jpg

<建築家のコメント>

建築の設計は不自由です。法律の規制、予算の限界、工程の管理、 竣工後の収支計画、さまざまな困難な条件を整理・検討し、交渉して実現していきます。

MNHは、用途地域や高度規制によって高さ10mに制限されたエリアでの計画でした。建築の問題を都市計画の問題として整理し、断面の構成を構造的なアイデアで解決しました。低い階高を天井までのフルワイドな窓によって居室の開放感を最大限に実現しています。

プロジェクトの可能性を最大化することは、目に見える表現のデザインを超えてプロジェクトが、まわりの環境や人々を豊かにすることです。

複合的なプログラムが、さりげなく街のなかに存在する。多様性のある豊かな環境を、共同住宅という「公共建築」を通して実現したいと考えました。

詳細情報
●所在地:神奈川県
●用途:二世帯住宅・共同住宅・グループホーム
●構造:鉄筋コンクリート造4階建
●敷地面積:610.91㎡
●延床面積:1452.58㎡
●コース申込:2019年10月
●カメラマン:福永一夫
●設計:2020年7月〜2021年10月
●工事期間:2021年11月〜2022年10月
●設計:長田直之(ICU一級建築士事務所)

ご利用サービス 賃貸マンション計画コース+紹介コース