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TORRE 狭小の賃貸集合住宅でも、魅力的な生活空間を

「相続で引き継いだ40坪の土地に賃貸マンション(RC造)を建てたいが、どのように進めていけば良いか」というご相談で、OZONE家designの無料相談にいらっしゃったS様。
お話をお伺いし、賃貸事業として成立するための企画から運営管理までを担える依頼先をプロデュースしました。

建築雑誌GA JAPAN 150GA JAPAN151にも紹介される洗練された賃貸併用住宅です。

【ステップ1】

計画地は東急東横線の人気駅から徒歩圏内の閑静な住宅街にあります。賃貸での不満の多くは音漏れであるため、可能であれば鉄筋コンクリートのRC造にしたいところです。しかし、敷地40坪では面積が少々小さいため、OZONE家designのコンサルタントが事業収支を概算すると予算的にもRC造は難しく、一般的な重量鉄骨造も厳しそうでした。

そこで、規格型鉄骨造の大手ハウスメーカーをご紹介し、集合住宅の間取りと事業収支計画策定を依頼たところ、ハウスメーカーの提案は軽量鉄骨2階建てのアパート形式。
収支は全く問題がありませんでしたが、S様の印象は「普通過ぎる」というもの。
S様は『周辺の賃貸にはない、魅力的な生活空間』を提案してほしかったそうです。

【ステップ2】

段階を踏んだことで、『周辺の賃貸にはない、魅力的な生活空間を提案してほしい!』という、S様ご自身の希望が見えてきました。

そこでデザイナーズ賃貸の企画から不動産管理を手掛ける不動産コンサルティング会社である、株式会社タカギプランニングオフィスをご紹介。株式会社タカギプランニングオフィスには、市場調査と事業収支計画策定、建築家選定を依頼しました。 建築家は集合住宅を数多く手掛けている長田 直之氏にお声かけをすることとなり、ハウスメーカーにはない建築家らしい検討材料の提案が期待されました。

そして迎えた提案当日は、なんと10以上のバリエーションの提案が示され、建築家ならではの多方向から検討を重ねたプレゼンテーションとなりました。

S様は長田氏が考える賃貸集合住宅のコンセプトや設計のすばらしさに魅了され、設計は長田氏に決定!
木造長屋形式の ≪小さな塔の集合体≫ の案で進めることを決めました。

平面図

■1階

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■2階

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■ロフト

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小さな塔の集合体。
それは≪閉じた箱≫と≪開いた箱≫が交互に並ぶ賃貸住宅

※下記 灰色の塔は閉じた箱、白い塔は開いた箱
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木造の「小さな塔の集合体」

賃貸住宅の計画で気にすべきことの一つが音漏れの問題です。そのため、S様の当初の要望はRC造でしたが、今回の長田氏の提案では事業収支を考慮し、建設費を抑えるためにあえて木造としながらも、木造の音の問題も解決可能というものでした。

音漏れ問題の解決方法として、7つの住戸すべてを2階建て、別の住戸が上下に重ならない「塔」状にし、床面積は小さいけれども、高さ方向の空間は大きい住宅の集合体にしました。

■1階 天井高は抑えた水回りとキッチン

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■2階 天井の高い大きい空間

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©Kazuo Fukunaga

搭状の住戸による構成を考えると、一番小さい住戸では1階の床面積が8㎡しかなく、垂直導線の距離が大きな課題です。
そこで1階の天井高を抑えて水回りとキッチンを集約し、床もタイルにすることで土間のような空間をつくりました。そして、上に2階の天井の高い大きな空間を載せました。この構成は、2階の空間と地面との距離を物理的に近くすることができるため、階段スペースを小さくすることができます。
また狭い空間を有効利用するため、階段を家具として扱い、階段下を収納としても使用できるデザインにしました。

■階段を巾450ミリの家具としてつくる

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©Kazuo Fukunaga

≪閉じた箱≫と≪開いた箱≫

7つの住戸は、性格の異なる≪閉じた箱≫と≪開いた箱≫のふたつの箱からできています。2種類の箱が交互に並び、所々に小さい庭も挟み込むことで、インフラとしての多様性を確保しています。木造で構造的に必要な壁量をうまく≪閉じた箱≫として集約することにより、基本的にブレース(筋交い)が出てこない≪開いた箱≫を作り出している、これも木造ならではの課題解決方法です。

同時に、屋根も異なるデザインとなっています。高密度にならざるを得ない全体構成の中で、4つの≪閉じた箱≫(ボリューム)に各々独立してかかる屋根と、その箱と箱をつなぐようにしてかかる隙間(ヴォイド)の屋根が生まれています。

■高いところから建物を見る

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■開いた箱

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©Kazuo Fukunaga

■ロフト

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©Kazuo Fukunaga

≪担当コンサルタントのコメント≫

「周辺の賃貸にはない魅力的な生活空間を提案してほしい」という希望を、どこに相談したら良いか分からなかったS様。その思いをOZONE家designのコンサルタントが汲み取り、最適な依頼先を紹介することができました。

完成後のオープンハウスの際、私は最寄り駅から歩いて現地に向かいました。閑静な住宅街にたたずむこの集合住宅は、エントランス広場に緑を配置されているため、温かく、爽やかに出迎えてくれました。単身者に客層を絞り、1階の土間空間から上へと伸びる2階やロフトが、他にはない大変個性的な空間です。
木造にすることで無理のない事業計画を立て、かつ、永く愛されて選ばれる賃貸集合住宅を建設。自分らしい賃貸経営が叶ったS様です。

≪設計者:長田氏のコメント≫

二階の天井高は他の賃貸にはない開放感を与えてくれます。上下階が自分の部屋なので音に悩まされることも少なく、狭小の敷地条件や予算だとしても、他では実現出来ない木造賃貸集合住宅を作ることは可能です。賃貸住宅が面白いのは、「一時的」な住まいであるということ、さまざまな挑戦をすることが出来るということです。そして、そのようなニーズもたくさんあります。

詳細情報
●所在地:東京都
●構造:木造軸組構法 ●敷地面積:136.14㎡ ●延べ床面積:137.89㎡
●コース申込:2018年3月
●設計:2016年4月〜2017年3月 ●工事期間: 2017年3月〜2017年11月
●ご利用コース:賃貸マンション計画コース、不動産会社紹介、新築・建て替えコンサルティング 建築家紹介コース
●プロデュース OZONE家design、株式会社タカギプランニングオフィス
●担当コンサルタント:山内 亮美、村松 葉子(文)
●設計:長田 直之 ICU一級建築士事務所
●写真:©Kazuo Fukunaga

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