「いままでずっと駆け足で生きてきて、50代となり、少し周りを見渡せるようになってきた気がします。その時々で自分が欲するものを手に入れてきたはずなのに、改めて住まいを見渡したとき、まとまりがないことに気づいて...。気持ちよく快適に暮らせるお部屋にしたいのだけれども...」
と、女性のお客様からお悩みを伺いました。
年齢を重ねることで好みが変化することもありますし、自分に必要・不必要なものが見えてくるタイミングでもあるのが50代です。
私自身も50代となり、これから先のことを考えるようにもなりましたし、もう少し自分を大切にして、豊かに年齢を重ねていきたいと思っていたところでした。そのため、お客様のお気持ちにとても共感しました。
ご相談いただいた女性は「いまの自分に合う部屋のイメージがまとまらなくて」と言いながら、インスタグラムなどで集めたインテリア画像を見せてくださいました。ご自身の好みとのことでしたが、エレガントで上品なスタイルから、モダンでシンプルなものまで、画像は幅広くあり、一貫性がありません。
インテリアのご相談では、お客様とデザイナーがイメージを共有することがファーストステップとなります。
『どこから整理しようか。』と考えていたところ、画像に見覚えのある曲木椅子が何枚か写っていました。曲木とは一本の木に熱を加えて曲げる製法で、強度を保ちつつ、美しい木目を見せることができます。
「曲木の椅子がお好きですか?」と尋ねると、実は1脚だけ捨てられない椅子があり、同じ曲木の椅子が写っている画像をピックアップしていたとのこと。
今の暮らしの中で大切にされている家具があったのです。
ご自宅にある曲木の椅子は、亡くなったお母様が愛用されていたヴィンテージ家具のトーネットNo.214(ドイツ)。沢山の思い出が詰まっている椅子だそうです。
[トーネットNo.214]は160年前に設計されたモダンチェアの始祖と言われるものですが、優美で軽やかな中におしゃれ感があり、私も大好きな椅子です。似たようなデザインの椅子もありますが、何より本物の存在感は違います。
大人のインテリアには、大切にして長く一緒に暮らせる"本物"をお勧めしています。
"本物"とは、優れたデザインと機能性を兼ね備え、高度な職人技術でつくられた上質な家具を指しており、安価で短いサイクルで使い捨てる家具とは対極にあるものです。自分のこだわりを満たす"本物"の家具をご自宅に配置することで、全体の雰囲気も相応しいものとなり、愛着も沸いてきます。思い出が詰まっている家具なら尚更です。
丁寧にイメージをヒアリングしていくうちに、何となくプランの方向性が固まってきました。最初は「この椅子を別の部屋に移動しても構わない」とおっしゃっていましたが、お客さまご自身がこの椅子をお好きだったこと、優美な曲線を取り入れつつモダンな格好良さも欲しいとの要望だったことから、[トーネットNo.214]はご要望にうまく合致するため、この椅子を起点にイメージを膨らませ、全体のインテリアプランをつくる方向で進めることとなりました。
「自分一人ではインテリアのイメージがまとまらずにモヤモヤしていたが、スッキリして期待感が湧いてきた」と、お客様の笑顔も晴れやかになりました。
インテリアは暮らしや人生観に影響すると思っています。だからこそ、大切に考えていただけたことを嬉しく思います。
OZONEのインテリアデザイナーは、言葉にならないイメージを具体的なプランにまとめていく作業をお手伝いしています。
国内外の様々なアイテムの中からご予算に合わせて最適なアイテムをセレクトし、完成度の高いインテリア空間を実現します。また、新築やリノベーション時の壁紙やフローリングなど、内装選定のお手伝いも行っています。
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