2020年3月12日から住宅事例を紹介するパネル展 「建築家と工務店の底力」展 -新築・建て替え編- がはじまりました。どれも素敵なお宅でぜひ多くの方に観に来ていただきたいと思っておりますが、昨今のコロナウイルス感染予防のため、外出を控えていらっしゃる方も多いと思います。また、4月11日には私コンサルタントがそれぞれの底力を語るセミナーを開催する予定でしたが、中止とさせていただいております。
そこで、各建築家へ私がインタビューした内容を、順次、こちらに掲載させていただきます。ぜひこちらのページから「底力」を感じていただき、開催中にお越しいただく機会ができましたら、実際のパネル展を観ていただきたいと思っております。(→追記:2020.6.30展示は終了しました)
【建築家 相川直子氏・佐藤勤氏】
こちらは都内で、4×13mという狭小といってよい敷地のご計画です。設計のご苦労などお話しをうかがいました。
コンサルタント(以下CO): パネルから拝見すると、建て主の方には「庶民的で、いい感じに枯れていく家」というイメージがあったようですね。それを聞いてどのようなことを思いましたか?
相川・佐藤:そのイメージに対しては、贅を尽くすのではなく経年変化を楽しむことができる自然素材を、検証を重ねながら丁寧に選ぶと言うことだと考えました。
結果として「庶民的」と言う言葉になりましたが、具体的なイメージを共有するために特定の小説のシーンや映画の話、特定の建物の空間など挙げあいました。流行り廃りのない本質的な価値を持った材料や工法で家づくりをしたいと言う意味となります。
CO: 土間と茶の間のアイデアが印象的ですが、設計の経緯はどのようなものでしたか?
相川・佐藤: 建主と私たちとの多くのディスカッションとエスキースの結果です。
普通に作ると、単に狭い部屋が廊下でつながれた「致し方ない」と諦めざるを得ない住宅ができてしまいます。特にこのプロジェクトはコンパクトな空間なので、ひとつの選択肢の間違いが大きく全体に影響すると考えていました。常識や思い込みを捨て、結論を急がず、可能性を追求しながら原型となる形にまとめていきました。
CO: 外観についてもお聞かせください。
相川・佐藤:私たちは板張りの外観の住宅を提案することも多いのですが、今回採用した焼杉は建主さんからのご要望です。生家がある岡山県には焼杉の家が多くあり、自宅を立てる際には自分も焼杉を使いたいと思っていたそうです。
CO: 設計で苦労した点はなんですか?
相川・佐藤:コンパクトな住宅のため、天井も壁も懐なく設計するのを前提としているので、電気系配線やエアコンの配管計画には施工チームとのコミュニケションが必要でした。建具や照明など建主さんからの支給品が多く、その多くがデッドストック品や古道具なため、施工し安全に使用できるように準備するのに時間を要しました。
CO:建築家の底力とは?
相川・佐藤:今回も建て主さんの言葉のイメージを、具体的なイメージとするためにたくさんの時間を使いました。また、常識や思い込みを捨てて、可能性を追求することにも力を注ぎました。丁寧に打合せを重ねて希望を汲み上げ、それを実現可能な形に整理すること、それらすべてが建築家の力であると思います。
CO:ありがとうございました。
[建築家 相川直子氏・佐藤勤氏 2020.4.7記]
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