『建築家に設計してもらった場合、高齢で設計事務所が閉じられたら、その後は誰に相談すれば・・・。』このような質問を何度となく受けて来ました。
特に、会社組織の設計事務所とは違う「アトリエ事務所」(その建築家が一代限りで、敢えて終了)の場合は、どうしたら良いでしょうか。
佐賀・高橋設計室の高橋 正彦さん(写真)に「建築家が設計した住宅を引き継いでリフォームし、壊すことなく大事に長く住む取り組み」について聞きました。
高橋さん|もともとは佐賀が亡くなる半年前くらいに完成した建物で、計画当時は僕も模型を作ったり図面を書いたり現場に行ったりしていました。
クライアントさんも気に入ってくれていて20年以上大切に住んでいたのですが、ご家庭の事情により売却することになってしまったようです。
あるとき、この建物を購入された方より僕のところへメールが届きました。
その内容は
「完成から20年以上経っている建物ですので当然傷んでいる部分もあり、また自分たちの暮らしに合うように手を入れたいのだが元のデザインを壊したくない。出来ればその両方の点でアドバイスをして欲しい」
とのことでした。
高橋さん|建築家はそこに住む家族、その建物が建つ環境などに対してどのような形が一番理想的かということを考えて設計しています。
そのようにして考えられた建物に別の設計者が手を加えるとき、大切なことは設計時に思い描かれたコンセプトを読み解くということだと思います。
その行為は日頃建築家が建物を設計するときに行っていることとそう遠くはありません。
以前設計をした自分の建物をリノベーションする時でさえ、当時どのようなことを想い設計していたのかを考えるくらいですからね。しっかりと考えられた建物に別の建築家の手が加わったとしても、元のコンセプトをきちんと読み取り、その上で新しいコンセプトを加わえていくということは決しておかしいことではなく、とても素晴らしいことだと思います。
高橋さん|今回は大規模なメンテナンス工事、あとは一部暮らしやすいように手を加えるという内容です。
メンテナンスは以前の持ち主が定期的にしていたようですが、やはり暮らしながらですとついつい後回しになってしまう部分もあったようです。
今回は建物の引き渡しから引越しまでの間にすこし時間をとって、外壁や屋根などの塗装関係やそれ以外の不具合なども修繕しました。
塗装の色や使用する材料などに関しても提案させていただいています。
また、間取りなどの大きな変更はしませんが、暮らしやすいように新たに開口を設けたり、僕がデザインした家具などを備え付けたりしました。
そのときもできるだけ元のコンセプトは崩さずに、新たなものを加えていくということを心がけました。
住み手のライフステージが変わることで、家へのご要望や家族構成が変わってきますし、売却して住み手が変わることもあると思います。状況に合わせたリフォームをして、良い住宅は長く、できれば【100年住宅】を目指す気持ちで、持続可能な世界へつなげて行けたら素敵なことだと思います。
季節の移り変わり、風の向き、光の流れ、周辺の景色等が自然と感じられる、おおらかで気持ちのよい空間を提案します。また、住む人のライフスタイルに合ったシンプルでバランスの良い建築の設計を心掛けています。家づくりはけして難しい事ではなく、とても楽しいものです。自分たちのライフスタイルに合った、快適で気持ちのよい家はどのようなものか?その事を一緒に考えていきましょう。
1967年 東京都大田区生まれ。
1989年 佐賀和光+エー・アートに入社。
1992年より佐賀和光が個人事務所を設立し、それ以降二人三脚で建物を手掛ける。
1999年8月佐賀が、逗子のサーフポイント大崎でサーフィンをしている中、海の上で死去。その後事務所を引き継ぎ現在に至る。湘南で設計活動をしている。
エー・アート時代の人々との出会いは、今でも僕の中で大きな財産となっています。その中で最も大きな出会いは鵠沼のターザン、ボクゾーさん、 こと故 佐賀和光と知りあった事でした。佐賀さんには建築に関してはもちろんのこと、それ以外の大切なことをたくさん教えてもらいました。そのとき教わったことは、僕が建築を考えるときの一つの基準となっているのかもしれません。
趣味:木工・ギター・ウクレレ・サーフィン・ランニング・読書・散歩・猫と遊ぶ
(2021.11月記。聞き手|住まいづくりコンサルタント 村松葉子、写真|リフォーム前の住宅(髙橋さん提供)。現在工事中だそうです。どんな住まいになるか楽しみですね。)
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