おふたりによるクロストークを動画でもご覧いただけます。
ぜご視聴ください。(約20分)
(※2023年2月時点の情報となります。最新の情報とは異なる場合がございます。)
近年、中古マンションを購入してリノベーションし、入居する方が増えています。
そこでOZONE家designは、建築家との家づくりに特化した「創造系不動産」代表の高橋 寿太郎氏と、デザイン性と住環境性能の両立を目指し、新しいリノベーションを追求する建築家:久保 和樹氏を登壇者に迎え、クロストークを開催しました。
後編である今回は、不動産会社と建築家、それぞれの立場から「リノベーション事例」「今後の建築家リノベーションの展望」について、語っていただきます。
WEB事例集「建築家で大成功のリノベーション」連動企画 『買ってリノベ』クロストーク 前編はこちら >
高橋 寿太郎 氏(右) 創造系不動産株式会社代表 神奈川大学建築学部教授
久保 和樹 氏(左) H2DO一級建築士事務所代表 一級建築士
(久保氏)ここからは実際にうちでマンションリノベーションをした事例を見て頂こうと思います。
設計でデザイン性と環境性能を共立させることを掲げていますので、戸建て住宅ですと環境シミュレーションをして住宅の性能を数値化しています。
マンションの場合は、上下左右の住宅がある場合、周りの住戸が断熱になってくれて、窓にインナーサッシ(※1)を設置すればそこまで劣悪な環境にはならない。とは思います。インナーサッシは気密性も上がるので、室内環境は良くなります。ですが、建築家としてはそれだけでは終わらせず、マンションの場合も太陽高度から日射がどれくらいマンションに入ってくるかなどを検討します。
今回の事例は神戸の都心にあるマンションで、南側と西側が外部に面しています。夏にはかなりの西日が日射取得してしまうため、そのネガティブ要素を抑えることを検討しました。
写真で見ると分かりますが、今回の事例のコンセプトは「住宅の中に都市を引き込む」。南側が大きな道路に面しており、余り外からの視線を気にする必要性はなく、クライアントと打合せを重ねる中で「住宅の中に都市を引き込む」というコンセプトに決定しました。コンセプトを実現するために、住宅の躯体の内側に間仕切りをつくることとし、この間仕切りには3つの機能を持たせています。
1つ目は空間のデザインをつくる、2つ目は外部からの視線をコントロールする、3つ目が住環境性能を上げるということ。
西側に「はなれ」のような小さい部屋があり、外壁と間仕切りの間に縁側の様な空間をつくることで、メイン空間に対する西日を受けてくれるバッファゾーンをつくっています。さらにインナーサッシ(※1)を入れ、間仕切りと躯体の間に断熱材も入れています。この事例のマンションは築20年が経過しており、壁に断熱材が入っていない無断熱の物件でした。
間仕切りをデザインする時に太陽高度を考慮して、南側からは日差しが入るが、西側からはなるべく日差しが入らない様に工夫し、窓のデザインに反映させています。環境シミュレーションをすると数値が出てきますが、数値の良し悪しで一喜一憂しているだけではなく、出て来た環境シミュレーションの数値を設計に応用し、クライアントが望む住空間をつくるということに意味があると思っています。そうするためには、住空間の設計と環境シミュレーションを繰り返さないといけないのですが、繰り返すことによって相乗効果がおき、良い空間ができると思います。
クライアントの要望は千差万別・十人十色なので、環境シミュレーションの利点は、数値を見ながら、「デザイン」、「断熱性能」、「コスト」のバランスを調整できるところです。今回はクライアントの要望に合わせ、窓の位置や形状を変えながら設計を進めました。
※1 インナーサッシ
元々ある窓サッシの内側(インナー)に、もう一つ窓サッシを設置して窓を二重にすること。 インナーサッシにすると、二重になった窓の間に空気層ができることで、この空気層が、断熱・防音に大きな効果がある。
(高橋氏)リノベーション中は不動産的にも注意すべき2つの点があります。
1つ目は、住宅ローンで家づくりをされる方がほとんどだと思うのですが、不動産を買った時に例えば5,000万円を融資してもらったとします。リノベーションでは、さらに追加で何回かに分けて融資を受けるということになります。何カ月かで設計を行い、その後に何カ月かで工事をするため、その間で何回かに分けて融資を受けるということを「分割融資」や「つなぎ融資」と言ったりします。
この融資をする際の銀行選びがポイントになります。銀行によってはそういったリノベ―ションに余り費用を融資出来なかったり、逆にそっちを手厚く考えている銀行もあったりします。不動産を買ってリノベーションということにはまだまだ不慣れな不動産会社さんも多いですから、リノベーションの場合、物件を買う前から不動産会社選びと銀行選びをしっかり検討してほしいです。
2つ目は、今まで中古を買ってリノベーションをするということがあまりなかったため、一般の不動産会社では、売ったら終わりということが基本多かったんです。それは不動産会社が悪いというよりも、そういう契約・仕組みになっていたからです。しかし、今後はプロとしては、どんどん建築と不動産のあいだの壁を壊し、それぞれの専門家が有機的にタッグを組めるようにしていかなければならないと考えています。賢いクライアントはそうした家づくりがベストだ、と知っていてもらえたらと思います。
不動産会社は売って終わりではなく、リノベーションが進んでいる間も、融資の事、その他をフォローしてくれる体制になっているかどうか、クライアント自身にも確認してほしいです。
(久保氏)そうですね。うちでも「物件買いました。リノベーションして下さい。ローンってどうしたらいいですか?」と聞かれる事が多々あります。
(高橋氏)もう買い終わってるのに、ですよね。それは典型的です。そうではなく、買う前に不動産購入とリノベーションにかかる費用はそれぞれ幾らとして、銀行と融資についてのコミュニケーションが取れている必要があります。ただ、銀行と融資について誰がコミュニケーションをとるのかというと、本来はクライアント本人ではなく、仲介する不動産会社がきちんとできなくてはならないんです。しかし、そういう不動産会社は多くないため、先ほどと同じ話ですが、建築と不動産のパートナー探しが重要になって来たと思います。
(久保氏)個人的には、リノベーションにもクリエイティビリティ(創造性)が必要だと思っています。デザイン性に加えて環境性能も重要だと考えていて、そこを合わせてリノベーションすることで豊かな住空間になると思います。
あと、リノベーションの場合、躯体の大きさが決まっていますので、オーダー家具をつくることを推奨していて、一番大きいものはテーブルです。テーブルは狭いところに既製品を置くと動線効率が悪くなるので、「オーダーでつくった方がいいですよ」と、よく言っています。
オーダーだと高いという場合には、うちはDIY家具をつくっていて、それはパーツを設計して、カットしたパーツが納品されて、クライアント自身が組み立てを行います。またリノベーションをする際、工務店がつくれるような家具であれば、そんなに割高にはなりません。
また、個人的な話としては、家に事業性を持たせることに興味があります。東京の商店街で空家の再生をいくつか行っており、それを【スモールハウスコンプレックス】と呼んでいます。小さい住宅を複合施設にリノベーションし、バラバラに貸すことを不動産屋さんと一緒にやっています。そのスキームを使うと、結構空家のシャッターを開けられるということが最近分かってきました。
(高橋氏)それは、壁が繋がっているから貸せない部分を細かく割っていけば貸せるし、住めるということですね。
(久保氏)東京の商店街でも、元住居兼店舗という空き家というのが結構あり、放置されています。空家が商店街にあるというだけでネガティブに捉えられるため、そこを再生するということは社会的にも意義がある事業だと思っています。
(高橋氏)不動産的に見た今後の展望としては、前編でお話した事になりますが、アメリカ・イギリス・フランスと比較すると、日本は中古住宅の取引量が1/10だということが、改善して来ると思います。今までは中古住宅の売買量が少なかったため、『新築の家が一生に一回の買い物』と言われていたものが変化してきています。
売ったり買ったりしながら自分達の暮らしに合わせてQOL(※2)を上げていけますし、経済的にもその方が有利だという事も分かってきています。アメリカは計算上、家を5~7回買い替えています。最初はにわかには信じられなかったのですが、どうも真実であるらしいです。
これからは日本でも2回・3回・4回と家を売買することが当たり前なってきますので、その時その時に合わせた暮らしというものを建築家と一緒に追及してほしいと思っています。
(久保氏)その時々に最適化して家をつくっていくというのは、これから新しい住まい方として可能性があると思います。
(高橋氏)個性的な住宅でも、いまこれからの流れで言うとキチンと売れています。逆に、誰にでも合いそうな物件も当然売れてはいますが、誰にでも合いそうな物件の価値が高いかというと、そうとも限らない。前の持ち主が建築家と一緒にクリエイティブにつくった住宅(※3)が、しっかり次の人に渡っているというのを目の当たりにしています。建築家としっかりしたリノベーションをして頂きたいです。
OZONEには建築家と不動産会社をしっかり選べるサービス「OZONE家design」がありますので、このようなサービスを利用し、クライアントは賢く建築家や不動産会社を選んでほしいものです。
※2 QOL
Quality of life(クオリティ オブ ライフ)は「生活の質」
※3 建築家住宅手帖
おふたりによるクロストークを動画でもご覧いただけます。 (※2023年2月時点の情報となります。最新の情報とは異なる場合がございます。) 建築家にリノベーションを依頼し、お客様の要望を解決した住宅事例をOZONE登録建築家(※)自身がご紹介しています。
https://archi-techo.com/
ぜご視聴ください。(約20分)
「経験・実績・デザイン力」のほか、設計者としての経験が豊富なことや、ご自身で設計監理した住宅が3件以上あるなどの条件を兼ね備えた建築家となります。
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