2019年に完成した "今ならでは"の住宅実例を、登録建築家自身がご紹介します。第3回はメグロ建築研究所を主催する平井充さん、山口紗由さん。
家族が住まいに長時間居続けるための提案です。居心地の良い複数の選択できる居場所を用意することで、同時多発的な家族の行動を受け入れることに配慮しています。
武蔵野の風景が残るこの町がもつ土地固有の微地形や歴史性を活かして、野草を植えたひな壇状の庭をつくりました。BBQにも使えるように、踏み荒らしても強いクローバーを植えましたが、子供のプールを置いて遊んだとも聞いています。ひな壇状の庭は、その密度で行き交う人と室内のブライバシーの距離感をコントロールもしています。内外共に閉鎖的にしてしまう塀をつくらずに、緑豊かで開放的な街角の風景を創っています。
1階平面図
2階平面図
リビング・ダイニングや寝室以外にも、窓辺のベンチやワークスペースなどの居場所をつくることで、多元的な振る舞いが許容される多焦点の居場所がこの棚畑ハウスの特徴となっています。
室内の中心にあるウチニワは、寛ぐ場所だけでなくダイニングやキッチン、ワークスペースや子供室から溢れ出す生活を受け入れる場所でもあります。
ダイニングは、地方に住む親が遊びにきたとき、家具をウチニワに移動して建具を閉じるとゲストルームに変わります。またこの場所は、コロナ禍の籠もり生活のお父さんのZOOM会議や子供のオンライン塾にも活躍しています。
この住まいは、外の雑菌を室内に持ち込まないようにするため、玄関に繋がる室内の土間に手洗いとトイレを計画しています。外で遊ぶ子どもたちや庭で植物の手入れをするときに使いますが、いまは帰宅してすぐの手洗いができる場所として役立っています。
窓は、季節の変化を生活に彩る内外の接点ですが、機能的な側面もあります。
夏季には、南側の出窓から風を取り入れ、室内で暖かくなった空気は温度差によって吹き抜けの上部に溜まるので、天井近くの小さな窓から外に輩出されます。そのため、風がなくても自然換気が行われます。
冬季になると、陽光を室内の奥まで引き入れて温めてくれます。その結果、床暖房はありますが、建主からは夏冬の寒暖の厳しい時期にエアコンを数時間しか使用していないと聞いています。
住宅を設計することは、住まい手の生活を地所に根付かせることだと考えています。そのため、いつも答えは同じではありませんが、豊かさを生み出して生活の質を向上させるものであることには変わりません。歴史的な建物の保存改修も行っているため、時を重ねることによって魅力が増していく建築の価値について日々考えています。
平井充さん、山口紗由さんプロフィール >>
(2022.8月記 撮影 *:新建築社 その他:鳥村鋼一(建築家の写真を除く))
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